令和4年度 技術士2次試験(トンネル Ⅱ-1-2)解答案

国立研究開発法人 土木研究所より

今年度に行われた技術士2次試験の解答案を掲載します。技術士試験の合格を目指して学習されている方々の参考となれば幸いです。技術士2次試験の解答案につきましては、不定期で掲載いたします。ご活用ください。

(問題文)

R4トンネル

Ⅱ-1-2 山岳トンネル掘削時の切羽観察項目を4つ以上挙げ、それぞれの項目についてその観察内容を説明せよ。(答案用紙1枚にまとめよ。)


(解答案)

切羽観察項目を以下に述べる。

①地質状況:地質(岩石名)とその分布、地質の走向及び傾斜を観察する。鏡面の安定性は、地山構成岩種とその変化動向の観察等も重要である。また、上半盤の安定性は、主に構成岩種に左右される。

②硬軟の程度:固結度、風化や変質の程度、岩片の強度を観察する。強度の変化には注意が必要となるのは、弱部が崩壊しやすいからである。

③割れ目:割れ目の方向、間隔及び状態、挟在物の有無と性状を観察する。特に天端部の安定性については、割れ目の分布状況や狭在物の性状、地層の走向傾斜及び湧水の状況等が関与しているため、主にこれらの観察が必要である。

④断層:断層の位置と走向および傾斜、破砕の程度。

⑤湧水:湧水の位置と量、濁りの有無を観察する。湧水の危険性については、湧水量とその経時変化、滞水帯の構造の状況等の観察が重要である。

⑥切羽の安定性:岩片、岩塊の剥離の有無と程度、切り刃崩壊の有無。トンネルの崩壊事故の多くは切羽で生じていることから切羽前方地質状況の変化等から早期に予測する必要がある。

地山は一般に不均一で、不連続性、異方性等を有しているため、その性状は配置によって異なることが多い。このためトンネル施行中は、新しい切羽が現れるたびに地質状況及びその変化状況を観察して設計、施工に問題がないか確認し、必要に応じて適切な処置を講じなければならない。

 

(答案作成の考え方)

 この回答は、土木学会「トンネル標準示方書」から作成しました。切羽の観察項目とその観察内容だけであれば、300文字程度になります。これで質問に対する回答とはなりますが、文字数の不足による減点が生じてしまいます。

そのため、観察項目を4つから6つに2つ増やすことに加え、観察項目の内容として、目的・留意事項も追加しました。

しかし、それでも文字数が足りないので切羽観察の必要性を末尾に持ってきています。この問題は、実務の経験がなければ回答することは難しい。もしくは、事前の予想問題を作成する等の対策が必要な出題と言えそうです。