知らないうちに親しさと懐かしさを感じさせる本・・・『夢枕獏「続・格闘的日常生活」』

作者の夢枕獏が、執筆の合間の出来事をつづったエッセイであり、観劇や観戦、ユーコン川での釣り、シルクロード、台湾や西表島など話題に事欠かない。どこに行くにも釣り竿と原稿用紙を持って行く。旅の必需品。

本人曰く、「三日も原稿を書いていないと禁断症状が出てしまう。それを解消するには、ペンを持ち、原稿用紙に文字を書くこと」。まるで、半分病気、そういう体質なのでしょう。

筋肉は、使えば太くなる。使わねば、落ちる。脳も筋肉も同じ。原稿を書く筋肉が、しばらく使わないでいると、弱くなるらしい。そして鍛えた「脳筋」で書いた文章は読みやすく、情景が目に浮かびます。

何というか、肩ひじが張っておらず、読者と同じ目の高さで、会話をするようにスラスラと書いてあります。時系列的に話を進めることや、鳥の眼から見た全体概要の説明は、私の頭の中にスッと入ってくる。

読んでいるうちに、著者とは長年の付き合いがあるような親しさを感じさせる、不思議な本でした。