人は感情と勘定で動く『板谷敏彦「金融の世界史 バブルと戦争と株式市場」』

 

本書は世界の歴史を金融の面から考察しています。

「人は感情と勘定で動く」と言いますが、歴史でも当てはまることだと思います。お金は人を動かす一種のエネルギーだとすると、お金がたくさんある国は歴史を動かす力があると言えます。

そのエネルギーを蓄積する方法の1つが交易をすること。地域ごとの価値観の違いを利用し、モノを動かすことによりその差額を利益として蓄積することができます。世界史的に見ても交易の盛んな国が富を蓄積してきました。

大航海時代の前と後では、ヨーロッパ世界が大きく変わり始めます。ヨーロッパの富の蓄積が進むことにより、ここから東洋に対する西洋の優位の分岐点になったと言えるでしょう。新大陸からの大量の銀の流入はヨーロッパの商工業の発展を促したからですし、その後のヨーロッパの金融市場が現在の金融市場の基準を作っているからです。

また、近年の金融に目を向けると、金融は戦争の軍資金集めに利用されてきた一方で、国債を発明し、会社を誕生させ、才能ある者に資金を提供する役割を果たしました。

株式市場の歴史はバブルと暴落の繰り返しではありますが、確率と統計による理論の構築がリスクを打ち消す株式投資の設計を可能にしてきました。

金融の発達はリスクとの戦いであり、その回避の手段として様々な制度が構築されています。私たち人間が豊かさを求め、リスクを回避する努力を続ける限り世界経済は発展していくものと感じました。